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「霊岸島水位観測所」
隅田川テラスにある奇妙な建築物「霊岸島水位観測所」について調べてみました
日本の近代測量は明治初期に始まりました。当時の測量方法は、主要河川の河口部に水位を測るための「量水標」を設け平均海面の水位データを用いていました。
「量水標」は、明治5年に利根川河口の「銚子量水標」が日本発で翌明治6年にここ霊岸島と、全国の主要河川で設置されました。
霊岸島水位観測所の零位は、A.P.0m(エーピーゼロ、メートル)と呼ばれ、A.P.はArakawa.Peilの略で、Peilは、オランダ語で「基準」あるいは「標準」の意味です。
その後、測量技術の進歩に伴い、平均海面データの全国統一が考えられ、そのとき選ばれたのがここ霊岸島水位観測所だったのです。しかし、その後の東京湾の埋め立てや隅田川の河川水の影響があり観測所としては理想的な位置とは言えなくなり、現在では神奈川県三浦半島油壺の観測所にその機能が移されています。
「東京湾平均海面と日本水準原点」
平均海面を算出するために霊岸島水位観測所で明治6年6月から6年3ヶ月、毎日の満潮位と干潮位を測定し、その平均値を求めこの時の値が1.1344mでした。
これを東京湾平均海面(T.P.0m)とし全国の高さの基準として定めたのです。
そしてその後の明治24年5月に東京都千代田区永田町に「日本水準原点」が設置され、霊岸島水位観測所からの水準測量で、日本水準原点の高さ24.5000mを基準点としたのです。
ちなみに日本水準原点は千代田区永田町の「国会前庭」の中にあります。
しかし、大正12年に起きた関東大震災の影響により昭和3年に24.4140mに改定されました。その後の平成23年の東北地方太平洋沖地震によって、同年10月に24.3900mに改定されました。
「現在の霊岸島水位観測所」
現在の霊岸島水位観測所は、隅田川のテラス護岸の施行に伴い、平成6年5月に元の位置から約36m下流に観測所を移設しました。
新しい観測所の3角形のフレームは、土木や建築の設計図などに高さを表す記号として用いられる ▽ をイメージし、その下端部はA.P.0mを指し、その一辺の長さは観測所位置の東経139°47′にちなみ13.947mとしています。
観測室については、斜方十二面体という形で、立方体それぞれの面に勾配45°の四角錘を付加したような形をしていて、川に沿って移動すると正方形、正六角形、八角形と変化して見えます。